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我が家の四猫物語(2)

更新日:2021年8月30日

 ガリガリの三毛猫くん(ちゃんか?)、名前をどうしようかと娘を入れて三人で考えようということになったのだが、まっさきに「あーぺっぺん」と娘が連呼する。あーぺっぺんにすると主張して、ちょっと呼びにくいんじゃないのといってもゆずらない。感嘆詞の「あー」、あるいは呼びかけの「あー」が含まれているのだろうか。根負けして「あーぺっぺん」と名前も決まる。妻と私は省略してぺっぺんと呼ぶことにした。

 この仔は見た目にたがわず実に聡明で、トイレが来るまではずっと我慢をしていて、トイレを買ってきて連れていくと一回で憶えて、粗相は一度もしなかった。

 落ち着かなくも楽しい日々が過ぎて、三日目の朝だったろうか、起きると娘の顔がぱんぱんに膨らんでいるのだった。その前の日くらいからだるそうにはしていたのだが、突然のことで、急遽、病院に行き診てもらうと「強度の猫アレルギーですね」と診断される。この病状だと家で猫を飼うのは無理でしょうという結論になってしまった。

 家族三人で、さあこれから猫のいる生活だとはりきっていただけにショックは大きく、とりわけ娘の落ち込みようは激しくなかなか慰めも効かない状態だった。もちろんまた野に放つのは忍びなくどうしようかと困っていたが、妻の実家が引き取ってくれることになった。ただし、あーぺっぺんという名前は激しく不評でただちにお福と改名されてしまった。しかし、お福は倖せに長生きし、天寿を全うした。

 月日は三十年過ぎて。さて、ミグノンから保護猫たちがやって来るとなったとき、では名前を決めようということで、この数年前に初代あーぺっぺん、お福が亡くなったのでこの名前をいただこうということでキジトラちゃん(女の子)旧名杏ちゃんはあーぺっぺんということになった。

 白猫の兄妹は、ブルーアイの兄はあまりに優雅で高貴な感じがしたので何か貴族っぽい名前にしようということになって、イヴ・タンギーやイヴ・クラインといった画家、あるいはイヴ・サン=ローランからYvesを借りてきて、そして別の画家さんからも少しお借りして正式名Yves de Laurencinイヴ・ド・ローランサン、通称Yvesということにしたのだった。妹の方は元気いっぱいでしょっちゅう走り回って明るく脳天気な仔だったので天気ちゃんと呼ぶことにした(写真で耳の先が尖っているのがYves、耳がまるいのが天気)。

 しばらくこの三人で暮らしていたのだが、天気があまりに元気が良すぎて、アーペッペンとYvesと生活ペースがまったく合わず、このままだと全員不幸になると判断して早々にミグノンと相談し、別の里親を探してもらうことにした。幸いすでにこの仔たちの別の兄弟の里親になっていた人が一匹では可哀想だともう一匹探していたところだったのですぐにそこにもらわれて、天気は(名前も変えてもらって)今でもそこで倖せに暮らしているそうである。

 天気がいなくなってしばらく、一週間くらいだったか気の優しいYvesは天気をずっと探し歩いていた。夕方になると玄関のドアの方に向かってひいひいと鳴くこともあって不憫だったが、やがてアーペッペンとふたり仲良く寝るようになるのだった。しかし、Yvesにとってはなかなか悩ましい事態になっていくのだ。

(つづく)

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