夜ケージを開けっ放しにして寝るようになって、最初はいろいろなところ、例えば、ソファーでアーペッペンとYves二人で寄り添って寝ていたり、Yvesはかつて登ろう君と呼ばれただけあって一番高い食器棚の上で寝て、アーペッペンは床で寝たりとかさまざまだった。
前から昼寝は二人で私のベッドにのってきて寝ていたりしていたのだが、いつの頃からか、夜もアーペッペンは私のベッドに来て、私の脚にくっついて寝たり、顔をうずめたり、脚を抱くようにして寝たりするようになった。私はきっと寝相もあまり良くないのだろう、朝にはもうどこかにいってしまっているのだけれど。
これで、Yvesも一緒に寝てくれれば問題なかったのだし、あるいはYvesは妻の寝室に行って妻と寝てくれていれば何も問題はなかったのだが、Yvesはなんといってもアーペッペンが大好きなのだ。生まれてすぐに保護されてからずっとアーペッペンとは一緒なのだから。
Yvesも昼間は私の寝室に来てごろごろしたりしているのだが、夜になると部屋から出て行ってしまう。アーペッペンが出てけ出てけという気を発しているわけでもないと思うのだが。
消灯して眠りにつくまではYvesも入れるようにとドアを開けておくのだが、アーペッペンが脚にくっついて寝ていると、Yvesはドアの前を横目でこちらをちらちらと見ながら、しかし、見ていませんよという顔で通り過ぎていくのである。しばらくすると反対方向から同じようにチラ見しながら、しかし見てませんよという顔で通り過ぎていく。Yvesおいで、と声をかけても聞こえないふりをして、しかし、数分おきにドア前を左から右へ、右から左へと往復していくのである。Yvesはアーペッペンに嫉妬しているのか、私に嫉妬しているのか……。
つい、こちらも何か悪いことをしているような気になってしまうのだった。ちょうど大河ドラマで『真田丸』を放送している頃で、大泉洋演じる真田信之が正妻と愛妾との板挟みで右往左往するところなど意味不明に身につまされたりした。
Yvesはついにはキイキイもしくはヒイヒイというかん高い声で鳴き出すようになった。むりやり抱っこして私の寝室に連れてきてもすぐに出て行ってしまう、にもかかわらず、遠くの方で鳴くのだった。
娘が生まれてしばらくの間、妻は特に、私も娘の夜泣きにはずいぶん悩まされたが、それ以来三十年ほど経ってまさかYvesの夜泣きに悩まされるとは思いもよらなかった。娘のときも、妻がおんぶしてマンションの外の廊下を歩いたりして寝かしつけていたが、Yvesもマンションの共同廊下に出たがるのでしばらく見張りながら出してやるということが続いたのだ。
(つづく)
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